Yasuhiko MIKI *・ Katumi TOKUNAGA * ・Masanotri
FUTIGAMI The status quo and subsequent problems in
Munakata area AbstractIn recent years, it has become noticeably evident to find the rapid expansion of information-oriented trends around the city of Munakata and its surroundings where cellular-phones have been spreading, with the incidental installation of connecting points by the several Internet Service Providers(ISP). The authors have picked up Munakata city and its vicinity here to gather hand-on information as the good example over to what extent information-oriented phenomenon has penetrated in these areas, checking the status-quo and subsequent problems, marking comparison with concrete data of national level, dwelling upon information-oriented tendency of the local areas with incidental problems based upon fact-finding study.Key words : Internet , Information society |
1.はじめに INSとか高度情報化社会ということが聞かれるようになってすでに相当の年月が経過しているが、福岡県宗像市郡という地域では、ごく最近までパソコンを主力商品として扱う電器店もなく、大型電器店の片隅にわずかに並べられている程度で、地域の情報化が進展しているという実感がなかった。 2.福岡県宗像地域福岡県宗像地域は北部九州に位置し、博多と小倉のほぼ中間で、福岡市と北九州市のベットタウンとして発展してきた。美しい海岸線と宗像大社と古代遺跡で有名な沖ノ島がある。宗像市内には東海大学福岡短期大学のほか福岡教育大学があり、平成14年4月には日本赤十字社が経営する日赤看護大学が開設される。宗像地域の人口は、福岡市を100とした場合、その1割(平成10年のデータ)である。人口の増加率は昭和35年を基準にすると、平成10年度末で福岡市は1.8倍に増加している。これに対して宗像市は3.7倍、福間町は3.3倍となっている。この二つの町はともにJR沿線にあり、福岡市、北九州市という100万都市のベットタウンとして発展してきているということが統計上からも理解できる。 産業別就業人口から見た産業構造も福岡市の場合、第1次産業が1%で第2次産業が17.5%、第3次産業が81.5%である。これに対して宗像市と福間町は第1次産業がともに3.4%、第2次産業が20%+α、第3次産業が70%を超えている。つまり、宗像市と福間町は、巨大都市福岡市とほぼ同様の産業構造傾向を示している。産業別総生産額においても、福岡市の第3次産業が92%、宗像市が81.4%である。福間町においても77.4%となっている。それは産業別総生産額の割合という視点からも、裏付けられる。この事実はある種の条件整備(情報インフラなど)が整備されるならば、情報化と知識産業が加速度的に進展する可能性を秘めているということができる。 3.通信白書にみる福岡県宗像地域の現状平成9年度通信白書(郵政省監修)から引用した地域情報化指標の全国順位は福岡市が全国20位と上位にあるのに対して宗像市は503位、福間町は817位、津屋崎町は1366位、玄海町は2082位、大島村は1366位である。この順位は各地方自治体の会計予算額が多いほど全国順位が上昇するという一般的傾向を有する。しかし、大島村の一般会計予算は玄海町の三分の一であるにもかかわらず全国順位は玄海町の2082位に対して、大島村は1366位とはるかによい。この1366位という順位は予算規模が約5倍の津屋崎町の順位1366と同一順位にある。これは利用環境指標が18で巨大都市福岡市の二分の一であって、他の宗像地域のそれとほぼ肩を並べていることに加えて、開発整備指標が4という評価を得ていることによる。この数値は予算規模が7倍である福間町の数値の2倍にあたり、予算規模17倍の宗像市の数値6に迫るということによる。4.宗像地域のNTT回線数とインターネットのアクセスポイント地域情報化の尺度の一つとして、ISDN回線の契約者数の推移がある。宗像地域では(市外局番0940)平成8年3月末までのISDN回線の契約数は累積でわずかに140回線であったが、平成9年度の一年間に約80%の増加となった。そして、翌年の平成10年度では対前年比で約530%増となっている。平成8年度末を基準にして、2年間で実にそれまでの数の6倍に増加した。契約回線数では2年間で2%とその増加率は微増という結果となっている。このことは従来のアナログ回線をISDN回線に変更しているケースが一般的となっていることがわかる。平成10年度ではISDN回線の契約数が580回線増加したが、一方アナログ回線の約数は500回線減少している。その結果、実質80回線が新規にISDNを契約したと概ね推定できる。全国的なデータを平成10年版通信白書(p.172)から引用すると、NTTのISDN基本インターフェースの契約数は、平成7年度末で519,846回線、平成8年度末で1,037,384回線、そして平成9年9月末で1,634,525回線となっている。この全国的傾向と福岡県宗像地域の増加傾向はほぼ一致する。ちなみにNTT福岡支店エリア(壱岐、対馬を含む)の推移も同様の傾向を示している。以上の数値から宗像地域でも急速に情報化が進展していることが理解できる。とりわけ「インターネット」利用者数が激増しているものと推測される。そこでインターネットへの接続ポイントを調査した。 地域のプロバイダだけでなく全国規模のプロバイダがそのアクセスポイントを設置するに至り、現在ではインターネットへのアクセスに限り、福岡県宗像地域のボトルネックは解消されている。 しかし、現時点では、自社にインターネットサーバーを設置して、OCNエコノミーなどによる低廉なサービスを受けるには全域が十分にカバーされてはいない。したがって、そのような地域では、高額の専用線を福岡市内から引かなければならないのが現状である。 5.宗像地域におけるパソコン普及度宗像地域における情報化の進展の状況はISDNの契約数の増加などで一定の推測はできたが、現状を知るために、宗像市商工会のアンケート調査に共同作業をさせて頂き、平成10年11月15日に宗像市内の市民文化施設であり、総合レクレーションセンターでもある「宗像ユリックス」で、パソコンとインターネットについて次のような簡単なアンケート調査を実施した。表1は男性について、表2は女性についてのアンケート結果である。 (1) 「パソコンが家庭にある」と答えた方で、「よく使用している」のは、男性で22.2%、女性で6.8%、男性は女性の3倍となっていて、これは一般の予想と概ね一致する。この理由について、男性が女性に比べて機械好きであって、パソコンも例外ではないということもできるが、それが主たる原因ではなく、情報化社会へのかかわりが女性に比べて男性が多いということによる。つまり、パソコンの一般的な使用目的は、ワープロ、表計算、ゲーム、インターネット等であるが、男性は仕事の延長として自宅でワープロや表計算を使用し、あるいはインターネットで株価や各種情報を入手し、パソコンでそれらに関する情報を処理しなければならないという必要性が女性に比べて多いのではないかということである。このことは男性の予想以上の数がすでに情報社会型の勤務をしているのではないかと思われる。 (2)「時々使用する」を含めると男性が約37.2%、女性が27.3%であって、これは男女とも一般の予想よりもかなり高い使用頻度ではないかということである。 (3)「パソコンをほとんど使用しない」のは、男性の全回答者で11.8%、女性全回答者で10.5%であるが、なお、パソコン保有者数を100として「ほとんど使用しない」割合を算出すると、男性が23.7%、女性が28.6%であった。つまり家庭にあるパソコンの四分の一から三分の一はほとんど使用されずに放置されているという状況が明らかになった。その原因についても、使用方法が難しいからなのか、使用目的がないのか、型式が古くて使用できないのかなどについて、今後調査をしなければならない重要な項目である。 (4)「インターネットを知っていますか」という質問に対して、男性の85.7%、女性の81.3%が「知っている」と回答している。とくに20代の男性では100%、女性でも90.6%が「知っている」と回答している。これはインターネットが広く認知されているということで、インターネット社会の進展が無理なく加速度的に拡大する可能性を示唆していると断言できる。 (5)インターネットを「知らない」と答えたうち、特徴的なのは、同一世代の割合で男性も女性も60歳代が最も多く、男性で「知っている」が50%、「知らない」が50%で、女性で「知っている」が57.1%、「知らない」が42.9%であった。これに対して50歳代では、男性で「知っている」が実に86.7%、「知らない」が13.3%で、女性で「知っている」が73.3%、「知らない」が26.7%であった。このことから50歳代と60歳代では、社会的現役と第2の人生の最中という層が明瞭に現れているものと考えられる。 (6)インターネットを「知っている」と答えた方で、「日頃使用している(会社、家庭で)」と答えたのは、男性の32.7%、女性の16.3%である。「日頃使用している」と答えた男性60歳代は1名、70歳代では0人であった。この数値から男性では職場での使用がかなり普及してきていることを示唆している。ちなみに、日経産業消費研究所が首都圏の20代から60代までの男女700人(有効回答数:574人)を対象に調査した結果、インターネットやパソコン通信を利用しているのは25.4%であった(日経新聞1999年1月25日付)。今回の調査(インターネットに関して)では男女343人中81名が「日頃使用」と答えている。これは23.6%であり、福岡県宗像地域でも全国平均とほぼ同一の結果となった。 表3は参考文献と今回の調査の比較である。このデータから男女別の単純平均値を算出すると、NTTデータ株式会社の調査では、男性が9.2%、女性が2.3%となり、これに対して今回の調査では、男性が6.3%で女性が2.9%となる。男女比較ではNTTデータの場合、男性が女性の約3倍、今回の調査では男性は女性の約2倍の利用率を示している。これは、男性の勤務先でのインターネット普及と大きく関係しているものと思われる。このデータからも福岡県宗像地域のインターネットの普及も徐々に全国的傾向で増加しているものと推測できる。なおNTTデータ株式会社の調査は、筆者らが行った調査の約1年前の平成9年11月に全国国勢調査地点に在住する18歳以上70歳未満の男女個人を無作為に抽出し、5,013票(回収率63.3%)を回収したアンケートである。 経済企画庁が発表しているデータによると1999年3月末におけるパソコンの普及率は29.5%である。1989年から1996年までの8年間で7.6%の上昇に過ぎない。一方1996年から1999年の3年間で12.2%の上昇という驚異的なパソコン普及率となった。1995年3月末では僅かに15.6%であったが、Windows95が発売された後の1996年3月末では、17.3%に上昇している。これは僅かに1.7ポイントの上昇であるが、Windows95が発売されたのが、前年の11月であるから、4ヶ月で1.7ポイントもの上昇ということである。 この新しいOSの登場により1997年3月末のデータで、4.8%上昇して22.1%になっている。これが25%を超えたのは1998年3月末になってである。 ところでWindows95に続くWindows98が発売されたのが、1998年7月25日である。その翌年1999年3月末には前年同時期の数値より4.8%上昇して、ほぼ30%のパソコン普及率になった。 この結果からWindows98はWindows95の発売時に比較すると、まったくと言ってよいほど大きな話題(騒ぎ)にはならなかったが、その実質的普及効果はかなり大きかったと推定できる。なお、我が国ではパソコンよりもワープロの普及がかなり進んでおり、その普及率は数年前から40%の水準にある。 特徴的なことは、普及率40%で飽和状態に達しているいるということである。これからさらにパソコンが普及することによって、ワープロの普及率は相対的に低下するのではないかと予想される。 以上の全国的なパソコン普及率29.5%と今回筆者らが調査した福岡県宗像地域のパソコン普及率33.9%を比較して言えることは、福岡県宗像地域の情報化の可能性はかなり潜在的なパワーを秘めているということである。 6. 地域情報化の推進役としての商工会大型店舗進出が相次ぐ宗像地区において小規模事業者は生き残りをかけ、ひと味違う次世代型経営戦略を行う必要がある。そのためにもパソコンの普及とインターネットの利用は欠かせないものと考える。しかしながら、小規模事業者個々がこの目的を実現するために行動することは容易ではないし、非効率である。 ところで、宗像地区には各市町村に商工業者の団体としての商工会があり、その使命を果たしている。 宗像市商工会では、近年上記課題にかんがみ地域情報化に関するさまざまな取り組みを行っている。そして、これらは小規模事業者らに情報化に関して啓蒙しさらにはこれに伴う地域発展に寄与している。 筆者らはこれらの取り組みが近未来の商工会のあり方として興味をもち、この取り組みについて調査を行った。 6.1 宗像市商工会の情報化の現状 6.2 商工会のホームページ 6.3 商工会独自の情報化事業 7.市役所、役場の情報処理システム表6、表7に示しているように宗像市郡の市役所・役場の情報化は一段落した状況であるが、先進の宗像市では次期システムの構築が重要な課題になりつつある。それと対照的なのは大島村で、ようやく緒についたところである。役場の規模も小さく、情報管理課などというシステムは不用で、各部署がそれぞれ担当している。インターネット(ホームページ)関連では玄海町のドメインの場合、genkai.com という米国のドメインを取得している。そのルートを検索すると、ホームページが置かれているのは国内のサーバーであることが容易に分かる。これはKDD系のレンタルサーバーを借用しているもので、業者任せの結果といえる。8.教育機関宗像市郡の教育機関でインターネットを積極的に導入しているのは、福岡教育大学、東海大学福岡短期大学のみである。東海大学第五高等学校は東海大学福岡短期大学のサブドメインとしての位置付けにある。その東海大学福岡短期大学は、福岡教育大学にルータを設置して福岡教育大学を経由して九州大学に接続され、SINETに接続されている。9.まとめ地域情報化の現状と課題を知るために福岡県宗像地域をとりあげて論じた。福岡市と北九州市という巨大百万都市の中間に位置する旧農村地帯の宗像地域であるが、この地域にもようやくインターネットに代表される情報化とパソコンの普及が顕著になってきた。一方、調査データとしては、明らかにされていないが、聞き取り調査などの過程で、地域の情報化を牽引する役所の人材が極めて貧困であることと、自治体の首長の情報化に対する理解度の重要性が浮かび上がった。とりわけ首長の情報化へのセンスは、今後を大きく左右することが、調査の過程で判明した。宗像地域では宗像市商工会が群を抜いて情報化のアクティビティが高い。これは毎月公表される福岡県中小企業情報センターのインターネットサーバーにあるホームページのアクセス数からも明らかになっている。高等教育機関として福岡教育大学と東海大学福岡短期大学があり、人材も豊富であるが、地域情報化に関して地域に溶け込んで貢献しているとは言いがたい状況である。この調査研究の過程で福岡県内の市町村のホームページを閲覧したが、ホームページ作成を業者に依存しているところが大半であった。したがって、ホームページ作成に要する予算も必要になり、必然的にホームページの更新頻度が少なくなるという現実があった。21世紀はインターネット社会である。そのインターネット社会で、地域が独自性を出して魅力ある地域社会実現のために情報化の面からサポートするために、ホームページを自作して、タイムリーにWebサーバーに転送できる作業能力が要求される。現状では市役所・役場に勤務する職員のリテラシーは極めて貧困であると認識せざるを得ない。 このことが地方の情報化が進展しない大きな要因の一つである。これを解決するために、役所の職員公募試験科目に「ホームページ作成能力」を問うことなどインターネット関連科目を必須にすることなどを提言する。 謝辞:本論文作成にあたり、お世話になった長谷川 愼 氏(宗像市役所)をはじめ福岡 県宗像市郡の市役所・役場、商工会の関係各位、NTT福岡支社および米村 徹 教授(本学国際文化学科)に謝意を表する。 10.参考文献1)恒松直幸・内藤孝一:「インターネット利用者の社会意識」、日本社会情報学会第13回全国大会予稿集、p.67〜p.72、1998(平成10).2)平成9年版通信白書、郵政省 3)平成10年版通信白書、郵政省 |